かずさDNA 研究所の持つヒトcDNA クローンコレクションは、分子量の大きなタンパク質をコードしている割合が高く、世界的に見ても有用な遺伝資源だ。現在、「ヒト遺伝子に関する実用化研究 推進事業(ウィスコンシン州交流事業)」の成果としてこれらcDNA クローンが有償配布されているが、サービスの質を高めているのが、プロメガ社の独自技術であるFlexi® ベクターHaloTag® だ。その経緯と相乗効果について、かずさDNA 研究所ヒトゲノム研究部の小原收部長とプロメガ株式会社マーケティング部/ テクニカルサポート部の長谷川明部長に伺った。


―どのような経緯でかずさDNA研究所とプロメガ社が連携することになったのでしょうか。

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小原 收 Ohara Osamu
1983年、京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。塩野義製薬株式会社、ハーバード大学を経て、1994年、財団法人かずさDNA研究所解析技術研 究室室長。2001年、千葉大学大学院医学薬府客員教授、(独)理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターグループディレクター兼任。2005 年、かずさDNA研究所ヒトゲノム研究部長。

小原 千葉県とウィスコンシン州が姉妹都市で、科学技術 連携を図ることになりました。千葉県から私に問い合わせがきて調べたところ、プロメガ社がウィスコンシンに本社があることがわかりました。プロメガ株式会 社の上田社長、長谷川部長とは以前から面識がありましたので、連携についてオファーを差し上げたところ、快諾して頂きました。私が研究するヒト遺伝子ク ローンコレクションの整備にプロメガ社独自の技術を組み合わせて、お互いの強みを活かせる事業をプランニングしました。

―プロメガ社の技術がこのような場で活用され、どのような効果がありましたか。

Profilepromega_hasegawa
長谷川 明 Hasegawa Akira
プロメガ株式会社マーケティング部テクニカルサポート部部長。薬学博士。 湧永製薬株式会社に入社後、分子生物学の研究に没頭し、博士号(薬学)を取得。
1986年に東燃株式会社(現・東燃ゼネラル石油)に転職後、C型肝炎ウイルスの検査試薬キットの事業化に貢献、年5億円以上の売上を上げる。1999年、プロメガ株式会社営業部長に就任、2001年より現職。

長谷川 ちょうどFlexiベクターHaloTagの開発がほぼ一段落して、cDNAクローンコレクションの構築事業にすぐ活用できるタイミングでした。 HaloTagはイメージングのツールとして開発しましたが、日本ではGFPが普及していて、なかなか浸透しなかった。ただ、HaloTagは多用途に使えるので、インサートの移し替えが容易なFlexiベクターHaloTagと遺伝子を一緒に組み込めれば、クローニングから機能解析までトータルのサポートができるのです。この事業で、二つのツールに想定していなかった事業展開が考えられるようになりました。

Flexi ベクターシステム:切断頻度 の非常に少ない制限酵素Sgf I、Pme I をベースにしたタンパク質コード配列の新しいディレクショナルクローニングシステム。大腸菌、哺乳動物細胞での発現ベクターを同一規格で整備しており、イ ンサートの相互の移し変えも非常に容易。移したいベクターとドナーを混ぜ合わせて制限酵素処理、ライゲーションしても90%以上の成功率となる。

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HaloTag®Rhodococcus rhodochrous haloalkan edehalogenase 由来のタンパク質解析用タグ。これまではタンパク質解析の用途ごとにタグを換えなければならず、ベクター側のコンストラクトを作り直す必要があった HaloTag® は、低分子リガンドが特異的に結合する受け皿タンパク質をタグとして利用しており、コンストラクトを変えずに様々な機能を持つリガンドを付帯させ、イメー ジングや標的タンパク質の捕捉など、広範なタンパク質解析を行うことが可能。

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―HaloTagとFlexiベクターを利用することは、cDNAクローンの構築にどのような利点がありましたか。

小原 HaloTagが多用途で使えるタグであることは大きいです。イメージングにしか使えないと競合する技術は多くありますし、生化学解析に使うためのタグも多くあります。ただ、両方で使えるものは少ないので、相互作用解析や細胞内局在の解析など、HaloTagだからこそできることがたくさんあります。 Flexiベクターも、インサートを中間ベクターを経ずに直接他のベクターに移せることが大きな利点です。あと、本事業では作製したクローンを発現確認し、発現を保証するところまでやりますので、プロメガ社のin vitroでのタンパク質合成系も強みです。

―全てのクローンの発現確認を行うのですか?

小原 はい。HaloTagを 用いると、サンプルとリガンドを混ぜてSDS-PAGEをすると、発現していればゲル内で蛍光検出できるのです。ウェスタンブロットをしなくても分子量が 測定できるので、非常にスピード感があります。いま配布しているクローンはベクターを入れ替える必要もなく、そのまま哺乳動物細胞に入れれば発現して、細 胞内の局在をHaloTagで検出することもできます。さらに細胞を溶解してSDS-PAGEで流せばHaloTag融合タンパク質の分子量もわかります。プロメガ社のいろんなツールをトータルで使って検証ができますから、そういう意味でもプロメガ社と連携して良かったと思います。

長谷川 いま一般に市販されている他のcDNAクローン コレクションは買ってすぐ使えるものが少ないのが実情です。本事業で整えたcDNAクローンコレクションはリピーターも多くいますが、研究経験が浅くても 取り入れやすいという声も得られています。配列も発現もすべて確認されていて、信頼性が高い。こういうコレクションは非常に大事で、ここから自分の欲しい ものをピックアップして研究する流れになれば、実験の速度はさらに加速できると思います。

―今後の展開はどのように考えておられますか。

小原 このプロジェクトの特徴は、公的資金を必要としな い、持続可能なコレクション整備であることです。今後はさらに多くのクローンを整備していくと同時に、それに立脚した次の展開を考えています。具体的には 病気の診断や予後判定に使えるようなものにまで仕上げるというのが次の課題です。また、千葉県は農業県でもあるので、食べ物と健康の関係を、医学研究分野 の研究者の方々とも連携して、本事業の技術的ノウハウが使えるようにしていきたいと考えています。

長谷川 我々はサイエンスをサポートしている企業ですの で、本事業のような日本発の技術をグローバルに展開していくということが目標です。かずさDNA研究所は千葉という農業県にあり、植物研究も非常に強いの ですが、ウィスコンシン大学も植物研究が盛んです。プロメガではいままで植物にフォーカスをしていませんでしたが、植物バイオロジーといいますか、日本発 のサイエンストレンドを作れれば面白いと思います。

プロメガ株式会社
所在地(東京本社)東京都中央区日本橋大伝馬町14-15 マツモトビル6F
Tel:03-3669-7981/Fax:03-3669-7982
(大阪営業部)大阪府大阪市淀川区西中島6-8-8 花原第8ビル704号室
Tel:06-6390-7051/Fax:06-6390-7052
設立平成7年2月
URLhttp://www.promega.co.jp
財団法人 かずさディー・エヌ・エー研究所
所在地千葉県木更津市かずさ鎌足2-6-7
Tel:0438-52-3900/Fax:0438-52-3901
設立平成3年3月
URLhttp://www.kazusa.or.jp/index.html