自由に研究を行える理想の環境
山道:なんていうか、数理モデルってかっこいいんですよね。生き物の世界は多様で複雑ですが、数理モデルを使うと理解した気になれるっていうか(笑)。だからここでは、捕食者-被食者のモデル系として動物プランクトンの「ワムシ」と植物プランクトンの「イカダモ」を用いて、その個体群動態を数理モデルで表現しようとしています。イカダモは捕食者がいると集団で固まるようになり、ワムシの口の直径よりも大きくなることで身を守ります。しかし、塊になると自身の重さで沈下するというデメリットもあります。この被食者の対捕食者戦略としての表現型変化が個体群動態に与える影響に注目して、その個体数の変動を微分方程式を用いて調べています。
佐々木:なるほど。ぼくが最初にこの世界に入ったときと同じ動機だったんだね。長年、数理モデルを用いた生命現象の解明を目指してきましたが、理論だけではダメなんだと感じています。実験結果をフィードバックして数理モデルを構築する、実証と理論の両方から攻めることが必要です。
山道:元々東京大学で、千葉県の房総半島で増えているシカの分布データを使って移動分散の研究をしいました。フィールドワークを行う人が多い研究室でしたが、数理モデルにもずっと興味がありました。大学4年の冬に、総研大で宿泊型のオープンキャンパスがあることを知り、とりあえず行ってみようと思ったんです。
佐々木:私はまだ九州大学にいて、転任の内々定をもらったばかりの頃ですね。
山道:実は、佐々木先生が総研大に来るのを知っていました(笑)。先生はよく日本生態学会の学会誌に論文を書いていて、学部生の僕にとって日本語の論文はとても勉強になりました。先生が来ることが、総研大を選んだ理由の1つです。もう1つは、いろいろな学会に参加したり、そこで出会った人と共同研究させてもらえたりと、自由に研究を行える環境があることですね
佐々木:これをやりたいという意思があれば、それを具体的なところまで落としてあげることができる。だから、ここでは研究の目的を明確に持つことが必要になります。そういう意味では、山道君はこのプログラムにぴったりだと思いますよ。
山道:佐々木研究室の魅力は、いろいろなテーマができること。あと、手厚く指導していただけます。輪読会や面白い論文を紹介しあうジャーナルクラブも充実してます。
佐々木:僕の一押しの指導はホワイトボートで数式を書くこと。解く過程を一緒に共有することが一番大事なんです。長いときは、館内中のホワイトボートをかき集めて、2〜3時間かけて書き続けることもあるんですよ。
 
やる気と努力を支援する教育カリキュラム
山道:ここでは、最初の1年で3つの研究室を4週間ずつローテーションします。僕の場合は、いろいろな研究とその研究手法を知りたかったので、数理生態のモデル以外を扱う研究室を重点的に回りました。その中には、現在主論文の副査である印南先生と副論文の指導教員である長谷川先生がいます。
佐々木:だから僕を主査に選んでくれたとき、正直びっくりしました。でも、そういうふうにローテーションを活用する方法もあるんだ、なるほどなと思いました。
山道: 1つの学会にいると、その学会の雰囲気や常識がすべての常識だと思ってしまいがちなんですよ。そういう意味でも、僕はこれからもいろいろな研究に関わろうというスタンスでいます。現在は印南先生、長谷川先生のもとで、それぞれ別々のテーマで研究を進めています。いろいろなことに挑戦したいと思ってここを選んだので、3つのテーマを持ち、大変な面もありますが、今すごく楽しんでます。
佐々木:このプログラムのいいところは、効率的にいろいろな研究内容や手法を学べるところ。そしてそれを実現するために様々な支援体制ができていること。山道くんは人一倍努力家だから、ここで学べることを思う存分吸収して、巣立っていってほしいですね。(文:孟 芊芊)