キャリパーライフサイエンス社のLabChip GXはマイクロ流動を利用することでDNARNA、タンパク質の電気泳動を短時間、多サンプルで実現する。扱えるサンプルの最大数は384個、これを数時間で泳動することができる。さらに、サンプル分離能が高いこと、泳動パターンのクロマトチャートをサンプル間で重ね合わせることができる、といった特徴を活かすことでサンプル間での分子量変化が解析しやすくなっている。反応の条件検討やカラムクロマトグラフィーといったサンプル数が多くなる実験だけでなく、サンプル間で分子量変化を比較したい場合にその 力を発揮する。DNAの電気泳動に関しては、アガロースゲル電気泳動と比較した場合に分解能が非常に高いことをBioGARAGE vol.01で紹介した。実際の研究の場面で見ると、創薬研究の現場で抗体医薬の品質管理として、Non-Glycosylated Heavy Chainの比率を調べるためにこの機器が用いられている。

今回のキャリパーライフサイエンス賞は、兵庫県立大学でX線結晶構造解析を行っている寺脇慎一特任助教に決定した。結晶化に最適なタンパク質ドメインの効率的な探索がLabChip GXを利用する大きな目的だ。プロテアーゼを利用したタンパク質の限定分解によってドメインの決定を行うため、詳細な条件の検討にハイスループットのこの機器が力を発揮することが期待される。個人的な見解であるが、私自身修士課程でX線結晶構造解析を行っていたこともあるので、寺脇氏の研究の展開がどうなるか非常に楽しみだ

caliper

LabChip GX
装置は縦横が50?四方に収まり、奥行きが70?に満たないため、実験台にそのまま置くことが可能だ。データは専用ファイルの他、tifなどの画像フォーマットでも出力が可能なので、データ作成も容易にできる。

キャリパーライフサイエンス日本支社

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199911

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実験室用自動処理装置及び機器の製造、販売並びにサービス

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キャリパーライフサイエンス賞

寺脇 慎一氏

寺脇 慎一 (てらわき しんいち)

2006 3月奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科修了(理学)、奈良先端科学技術大学院大学COE 研究員、科学研究費特別研究員を経て、2008 年1月より兵庫県立大学生命理学研究科特任助教。

私は、これまで一貫して、X線結晶解析法を利用したタンパク質の立体構造解析によるヒトなどの高等動物の細胞増殖や運動性を制御する分子機構の解明に取り組んできました。今回、採択していただきました研究課題では、キャリパーライフサイエンス社のLabChip GXを利用することで、結晶化にもちいるタンパク質のドメイン領域を同定して、X線結晶解析を行い、微小管に依存した物質輸送の分子機構を原子レベルで解明したいと思っています。X線結晶解析を成功させるためには、第一に、研究対象とするタンパク質の精製と結晶化をおこなう必要があります。しかし、生物学的に重要かつ創薬の標的となるようなタンパク質は、その調製自体が困難で、結晶化をおこなうことができない場合が多々あります。今回、構造解析の対象とするBi caudal- D BICD)は、分子モーターであるダイ ニンと相互作用することによって、小胞膜などの微小管依存的な輸送を制御する因子ですが、精製過程で不溶化する問題を抱えていました。また、分子内にも既知の機能ドメインが存在していないことから、結晶化に適したドメイン領域を予測することも困難でした。そこで、本研究では、多検体を短時間に分析する能力に優れたLabChip GXを利用することで、?タンパク質分解酵素を利用した限定分解、?DNAライブラリーの作成、?組換えタンパク質の発現解析をおこない、可溶性の機能ドメイン領域を同定したいと考えています。これらの分析をおこなうことで、これまでは結晶化を断念していた試料調製が難しい難結晶性タンパク質に対する新しいアプローチを提案できると考えています。したがって、本研究の成果は、構造生物学という研究領域にLabChip GXの活用法を示した良い例となると確信しています。最後に、このような本研究の機会を与えたくださった株式会社リバネスとキャリパーライフサイエンス社にお礼を申し上げたいと思います。

産学連携推進マガジン BIOGARAGE05 2010.06 記事一覧

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2.                           沖縄ならではのバイオインフォマティクス人材育成講座

3.                           細胞内の分子ダイナミズムに迫る

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